2020年5月に年金改正の法律が成立し、65歳前の在職老齢年金の支給調整額が28万円から47万円になりました。対象者はもらえる年金が増えることになります。同時に改定された年金に係る内容を含めて簡単に説明します。
在職老齢年金制度とは
在職老齢年金とは、厚生年金の一種で、年金の受給資格がある年齢でもまだ会社等で働いている方に対して支給される年金のことです。収入により、年金の一部または全額が支給停止され、60歳から64歳までの方と65歳以上の方で計算式が異なっていました。
詳細は下記をご覧ください。
令和2年度税制改正(2020年5月29日成立分)
今回一部改正された法律は「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」です。この中で、定年前後の方に特に関心が高いと思われる在職老齢年金について説明します。
特別支給の老齢厚生年金については、60歳から64歳まで支給調整される額の基準が、28万円から47万円に引き上げられました。65歳以降は変更ありません。
対象者はカットされる額が減り、受給できる年金額が増えることになります。施行は、令和4(2020)年4月1日からです。
想定される特別支給の老齢厚生年金額
従来の65歳以上が受給できる年金額計算と同じとすると次のようになります。
ここで、基本月額とは、加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金等の月額、総報酬月額相当額とは標準報酬月額に年間賞与の1/12を加えた金額です 。
(1)基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合
調整後の年金支給月額
=全額支給(支給停止はありません)
(2)基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合
調整後の年金支給月額
=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
今回の改正で恩恵を受ける対象者
特別支給の老齢厚生年金は、男性1961年4月1日(女性1966年4月1日)生まれの方までが対象で、この日後に生まれた方には65歳前の支給はありません。
次の表は、特別支給の老齢厚生年金早見表です。先の改正の施行は、令和4(2022)年4月1日からですので、その時に次に年齢に該当する方が今回の改正で恩恵を受ける方々になります。
女性の方は、男性より5年遅くなっていますので、男性よりもこの改正のメリットを受けることになります。ただし、旧共済年金の方は男性と同じなので無しです。
年金のその他の変更
同じ改正でその他の年金の内容について変更がありましたので、それについても説明します。
年金額毎年定時の改定
65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給額は、退職時か70歳時点で年金額を改定していましたが、これを毎年改定されることになりました。その年働いた分が翌年からの年金に反映されるようになりました。
受給開始時期の選択肢拡大
現在、年金の受給開始時期は60歳から70歳と選択できますが、これを60歳から75歳の間で選択できるようになりました。
確定拠出年金の加入可能要件の見直し
確定拠出年金(以下DCと称します)の加入可能年齢を、企業型DCは65歳未満から70歳未満に、個人型DC(iDeCo)は60歳未満から65歳未満に引き上がりました。
また、DCの受給開始時期も 60歳から75歳の間で選択できるようになりました 。
さいごに
年金は全く複雑です。昔からの繋がりがありますので、改定してもあまり以前とギャップを生じないようにした結果です。今回の改定も本当は昨年にできる予定でしたがニュースで報じられた紆余曲折があり、やっと成立しました。
今回の恩恵にあずかれる方は少ないと思いますが、年金が増える方向で朗報です。年金は私たちの最後の砦ですので、これからもしっかりと見ていきたいと思います。