会社勤めを辞めて国民健康保険に入ると保険料はどのくらい納めるのでしょうか。会社勤めの健康保険料は会社と折半で、その金額が給与明細に示されますので、簡単に分かりますが、国民健康保険は計算して見ないと分かりません。自分の住んでいる街の保険料率で一例として計算してみました。
国民健康保険の選択は
病気になると頼りになる健康保険ですが、定年後に会社勤めをやめると健康保険の選択肢としては、一般的に①親族の扶養者になる、②国民健康保険に加入する、③任意継続被保険者制度を活用する等があります。
③任意継続被保険者は、会社勤めをしていた時の健康保険料が会社との折半でしたので、給与明細を見るとその保険料の2倍程度と健康保険料の目安がわかります。
しかし②国民健康保険の保険料は馴染みがありませんでしたので、調べて見ました。
なお、私の住んでいる街の資料を見ると「国民健康保険税」となっており「保険料」ではありませんでした。
これは、費用を徴収する際の根拠法の違いで、実質的には変わらないようですし、本論とは関係ありませんので、言葉としては「国民健康保険料」で統一します。
一自治体の国民健康保険料率等
私の住んでいる街の保険料率等は次のとおりです。
保険料としては、医療分、後期支援分、介護分があり、各々、所得割額、均等割額、平等割額、そして課税限度額が決められています。
医療分
私たちが病気やケガをしたときの医療費の財源になる部分で、全員が納めます。
後期支援分
75歳以降の後期高齢者医療制度を支えるための財源になる部分で、全員が納めます。
介護分
介護保険制度を支えるための財源になる部分で、40歳~64歳の方が納めます。会社の健康保険では、別に介護保険料として納めていますが、国民健康保険の場合は、介護分として一緒に納めます。
所得割額等
そして所得割額等は次のとおりです。
- 所得割額:前年の所得に応じて納める金額です。計算式は「前年総所得金額等-基礎控除額33万円)×上記表の税率」です。
- 均等割額:1人あたりにかかる金額です。
- 平等割額:1世帯あたりにかかる金額です。
- 課税限度額:上記3つ(所得割額、均等割額、平等割額)を加算して出した納める金額の上限です。
事例
試算する仮定を次のようにします。
- 家族構成:夫66歳、妻66歳で扶養者要件を満たす
- 給与:1,200,000円
- 年金(雑収入):2,000,000円
給与が「551,000~1,619,000円」の範囲の場合は、550,000円が控除できますので、給与所得は650,000円です。また、年金2,000,000円では、公的年金等控除1,100,000円ですので、雑所得は900,000円になります。
つまり、総所得は1,550,000円になります。
計算例
医療分、後期支援分、介護分を計算し、最後に合算した値が国民健康保険料(年額)です。
医療分
所得割額
(総所得1,550,000円-基礎控除330,000円)×6.25%=76,250円
均等割額
25,620円×2人=51,240円
平等割額
17,160円(1世帯あたりの金額)
医療費分の合計
76,250円+51,240円+17,160円=144,600円(年額、100円未満切捨て)
後期支援分
所得割額
(総所得1,550,000円-基礎控除330,000円)×2.39%=29,158円
均等割額
9,650円×2人=19,300円
平等割額
6,470円(1世帯あたりの金額)
後期支援分の合計
29,158円+19,300円+6,470円=54,900円(年額、100円未満切捨て)
介護分
介護分は、2人とも65歳以上なのでありません。
もしも、40歳から64歳の場合は、夫と妻が2人共の場合は均等割額を2人で、どちらか1人の場合は均等割額を1人で計算し、他は同様の計算します。
算出された国民健康保険料
国民健康保険料(年額)=医療分144,600円+後期支援分54,900円+介護分0=199,500円
留意点
仮定の下で算出した国民健康保険料は199,500円でした。夫婦2人の健康保険料としては、介護保険料も入っていますので、思ったより抑えているという印象です。
主な留意点としては、次のとおりです。
- 所得割は前年の所得を基に計算されます。このため、会社を辞めた年の年収が落ちても前年の年収が高いと負担としては大きくなります。事前に覚悟しておきましょう。
- 任意継続被保険者制度か国民健康保険に加入かは迷うところです。国民健康保険の方が金額が少なくとも、会社によっては高額療養制度の自己負担限度額を抑えている等条件の良いものもありますので、他のサービスを含めて比較した方が良いと思います。
さいごに
国民健康保険料を今住んでいる街の保険料率等で一例として計算して見ました。他の自治体も同じような保険料率等なのかと少し調べて見ると自治体により意外と差異があります。
最近では、行政サービスが良くなっており、国民健康保険料率(又は国民健康保険税)などは役場のホームページに掲載されていますので、一度、計算されてはいかがでしょうか。会社勤めの方も会社の制度との比較ができ、定年後にも役に立ちますので、一興です。